1998年5月

1.新聞発表題目

　進化するハードウェアを用いた電子写真印刷データ用高速、高圧縮率のデータ圧縮LSIの開発

2.発表の概要

　通産省リアルワールドコンピューティングプロジェクトにおいて、電総研とNECは、”進化するハードウェア”による電子写真印刷用データ圧縮LSIを開発した。印刷における網点データを、従来の国際標準(JBIG)に比べて約２倍の圧縮率でデータ圧縮することが可能なった。現行の電子写真印刷機でのデータ圧縮率が約２倍、JBIGを用いると3.5倍であることを、本LSIを用いることで6.7倍にまで圧縮することができる。本チップは高圧縮率だけでなく、圧縮された印刷データを高速に解凍して印刷するための、データ慎重速度も、進化するハードウェアの採用のより高速化されている。

3.開発の背景

　電子写真印刷機は、現行のオフセット印刷に代わるとも期待される次世代の印刷機である。オフセット印刷で、たとえば本を出版しようとするとき、ページごとに印刷する。つまり、第一ページ目を1000枚印刷してから、第二ページを1000枚というように、全ページ印刷してから製本する。しかし電子写真印刷では第一ページ目から一枚ずつ印刷する。つまり全体で100ページの本なら100枚印刷した段階で本一冊ができることになる。このような特徴は少部数のデマンド印刷に向くと共に、納入先の今上の印刷所まで印刷データをインターネットで送って印刷することで大量の紙の流通コストを低減でき、あるいは衛星経由のサテライト印刷も可能になる。
　しかし、電子写真印刷で取り扱うのはカラーで高精度（写真品質）のデータであり、１ページあたり30メガバイトにものぼる。しかも、印刷速度が１分72枚以上であり、通常のカラーコピー機の１分７枚程度都は、速度が圧倒的に違う。このような、大量データの高速印刷を実現するのが電子写真印刷のポイントでこのためには、高圧縮率、高伸張速度のデータ圧縮技術が不可欠であるが、従来は、印刷データを対象としたデータ圧縮技術がなかった。

4.技術的アピール点

• 進化するハードウェアによる予測関数の実現（高圧縮率と高速伸張の実現）
  今回開発したLSIは、予測関数を用いたデータ圧縮技法を進化するハードウェアを用いて飛躍性的に性能向上させたものである。基本的な原理は、これまで送られたデータから次に送られてくるデータをなるべく正しく予測することができれば、次にデータを送らなくてもよくなる。ただし、予測間数が正確でなくてはならず、これを我々は進化するハードウェアを用いて実現し、高精度の予測を実現し、これが高圧縮率につながった。1ページのデータの中だけでも、場所によって予測関数がかわるので、これを進化するハードウェアを用いて、こまめに予測関数を切り替えた。またこの予測関数を用いて圧縮データの伸張が可能となるが、この伸張過程がハードウェアで実現されるため、高速な印刷が可能になった。