２. 　ネットワーキング及び情報技術研究開発法案（NITRD）

　「ネットワーキング及び情報技術研究開発法（NITRD Act）」は、第１章（17頁参照）で述べたように、99年9月には下院科学委員会を通過し、第106議会の前期終了（11月）に当たって、正式に下院本会議上程が決められていた。同法案は2000年に入っての106議会後期においても、活発に審議が継続され、10以上の修正案を加えられつつも、2月15日に下院本会議のvoice voteにおいて賛成多数で通過している。可決後、上院に送付され、商業･科学･運輸委員会（委員長はジョン・マッケイン議員（共和、アリゾナ））に付託された。

　第1章で述べた原案から異なる点としては、まず図表・-3でわかるように、NSFに対する予算の手当てが増大する一方、DOEの予算がまた削られたことが挙げられる。NSFに対しては、米国の学校（小学校から大学まで）における数学と科学の教育を振興することが目的として加わり、そのための高度技術教育プログラムなどの予算が加わっている。DOEの予算削減については、99年におけるDOE傘下の研究所における原子力兵器機密を巡るスパイ疑惑なども遠因ではあるが、センセンブレナー委員長は下院通過後の特別記者会見にて、「DOEはIT関係のR&Dの多くを自ら基礎研究から応用研究に転換してしまっており、下院委員会は対象の中心にすべき基礎研究プログラムが少なくなっていることを予算削減の理由としており、2002年度からはDOE自らが議会に対しIT研究計画の基礎研究について説明する必要がある」旨を述べている。
　その他の修正としては、外国における暗号技術の入手利用性及び米国で輸出規制の対象となるような同様の技術との比較についての調査報告を議会宛に行うことを義務づけていること、高齢者や障害者のITへのアクセシビリティの研究プログラムを入れていること、デジタル･ディバイドに係わるNITRDの効果についての報告を義務づけていること、バイ･アメリカン条項を加えていることなどが挙げられる。
　その他に、科学委員会が立法管轄権を有しない厚生省傘下のNIHにおけるIT研究プログラムに対しても12億ドルの予算承認を行っている。但し、やはり管轄権のないDOD/DARPAについての予算承認までは、行っていない。なお、NGIについても、2001年度と2002年度について、DOEに3,000万ドル、NSFに5,000万ドル、NASAに2,000万ドル、NISTに1,100万ドルの計1億1,000万ドルの予算承認を行うという項が追加されている。