リフレクティブ・チーム(Rチーム)プロジェクトの目標は、人工現実システムを用いて実世界問題に新しい解を与えることである。その中心となる考え方は、実世界プロセスをコンピュータ上に詳細にマッピングし、この実装をシミュレーション、制御、最適化、実世界システムのプランニングに利用できるようにする点にある。人工的なシステムでは、測定、補正を行った後、制御システムから動的に収集した実世界データに基づいて継続的に相互作用を行うことにより、実世界システムを制御することが可能である。人工現実システムを実装するために、フリッブ・ティック・アーキテクチャ(FTA)と呼ばれる特殊なアーキテクチャを開発した。FTA の目的は、細粒度マルチエージェント・システムの実装を容易にすることである。FTAでは、PC クラスタのホスト間でシームレスに匿名データ転送を実行することが可能である。エージェント間の通信はタグボード(tagboard)により行う。タグボードは、読み出し専用データと書き込み専用データという２つの領域を備えている。プログラムは周期的に動作する。アクターは周期毎に、前回の周期おいて生成されたタグボードからデータを読み出し、次の周期で使用されるタグボードにデータの書き込みを行う。このデータは次の周期で使用される。１周期が終了すると、タグボードは反転(フリップ)する。書き込み専用の領域は読み込み専用となり、読み込み専用の領域は空にされて書き込み専用となる。

図１は、3つのホスト上で動作する小規模のFTA アプリケーションを示したものである。アクターは、分散タグボードの読み書きを行う。現在、 FTAを用いて、多数の人工現実システムを実装しているところである。主なプロジェクトはボン市の交通シミュレーションである。

図１：タグボードのミラーリング