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三菱電機株式会社（社長：谷口一郎）は、技術研究組合新情報処理開発機構（理事長：金井務）の協力のもとに、世界で初めて、汎用のパソコン8台（CPU
330MHzのDOS/Vパソコンを8台使用）を用いた超並列パソコンシステム(注1)上で、リアルタイム電力系統シミュレータを開発しましたので、お知らせいたします。
１．開発の概要
電力系統シミュレータは、安定して電力を供給することを目的に系統の種々の現象を解析するために用いられるものであり、当社が今回開発したシミュレータは、50μ秒以下の細かい精度で、電力系統において発電所から需要家まで送電する過程で発生する様々な動き・波形解析を、実際の現象と同じ速度でシミュレーションすることができます。パソコン台数を増やすことで大きな電力系統のシミュレーションもリアルタイムで実行可能です。
技術研究組合新情報処理開発機構の開発した高速通信ライブラリを適用した超並列パソコンシステムの使用によって、高い価格競争力と、汎用性・アップグレードの簡便さ・規模に応じて柔軟に対応できる拡張性を備えたシミュレータを構築できます。また、組み込み型の解析エンジンとして電力系統の運転を安定に保つためのオンラインのセキュリティ監視装置や運用システムへの適用が可能となります。
三菱電機株式会社と技術研究組合新情報処理開発機構では、今回開発した超並列パソコンシステムを使用したリアルタイム電力系統シミュレータを、国際会議SC
'98(注２) （1998年11月7日〜13日、米国オーランドにて開催）に出展する予定です。
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注１）超並列パソコンシステム：技術研究組合 新情報処理開発機構において市販パソコンを高速市販ネットワークで結合して並列計算機として動作させるように開発されたシステムであり、低いコストで高額な大型並列計算機なみの性能を引き出すことができる。
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- 注２）SC '98：The International Conference of High Performance Computing and
Communications ACM SIGARCH と IEEE Computer Societyが主催するスーパーコンピュータに関する国際会議
２．開発の背景
リアルタイム電力系統シミュレータは現実の電力系統の現象を模擬する装置です。リアルタイムとは現象を実時間と同じ速度で解析することを意味します。リアルタイム性は電力系統の計算機シミュレーションを安定化装置などのアナログ信号を扱う装置や保護リレーなどの被試験機器と接続して使用するために必要となります。また、FACTS(Flexible
AC Transmission Systems：電力用半導体を用いた電力系統安定化装置)
などの新しい装置や制御システムを導入するときに、事前にそれらを検証するために不可欠です。
従来より、電力系統のような大規模システムのリアルタイム演算処理を実現する手段として、超並列計算機があります。超並列計算機には、トランザクション処理・データベース管理・科学技術計算などの目的に特化した計算機があり、ハードウェア（特にアナログインターフェース）・基本ソフトウェア（特に通信インターフェース）共に、目的別に多大な最適化設計が求められてきました。本システムは、汎用パソコン及び汎用通信手段を適用することで、応用ソフトウェアに専念して設計すれば目的の性能が得られることを狙って開発に着手したものです。
このような状況のもとで、当社は、技術研究組合新情報処理開発機構の開発した高速通信ライブラリを適用した超並列パソコンシステムの上で、電力系統の電気現象を実時間で解析できるリアルタイム電力系統シミュレータを開発しました。
３．開発の主な特長
今回開発したリアルタイム電力系統シミュレータは、パソコン間の通信を15μ秒という非常に小さい遅延で実行する高速通信ライブラリを適用することにより通信時間を大幅に短縮したことが、大きなブレークスルーとなりました。そのため、スーパーコンピュータ並みの超並列パソコンシステムが実現可能となり、当社で開発を続けてきたシミュレータ技術を適用することで、リアルタイム電力系統シミュレータを実現しました。
本リアルタイム電力系統シミュレータの特長として、
○ すべてのハードウェアを汎用品で構成することで、高い価格競争力を実現している。（特に大規模化時に顕著である。）
○
パソコン1台から構成でき、拡張性・柔軟性が高い。
○ 汎用のハードウェアを用いているためアップグレードが容易である。
などがあげられます。
４．今後の展開
技術研究組合新情報処理開発機構では既に128台のパソコンを接続したスーパーコンピュータ並みの性能を持つ超並列パソコンシステムシステムを稼働させており、今後これを利用したより大規模な電力系統シミュレータについて開発を進めていく予定です。
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